ローマ亡き後の地中海世界(上)
- 2009.03.11 Wednesday
- 00:10
人間とは、良かれ悪しかれ、現実的なことよりも現実から遠く離れたことのほうに、より胸を熱くするものである。つまり、心がより躍るのだ。中世人の信仰心が高まったからこそ、十字軍は起こったのである。だがその信仰心の向う先は、聖地でなければならなかった。聖地の奪還であったからこそ、あれだけ多くの人々を巻き込んだ、あれほども長くつづいた大衆運動になったのである。拉致された不幸な人々の奪還では、一時的には十字軍であっても、連続した十字軍にはならなかったのだ。そしてこれが、ヨーロッパの歴史では、地中海の海賊という一千年もの間つづく現象が、重要視されること少ない理由ではないかと思っている。