ローマ人の物語〈15〉ローマ世界の終焉
- 2007.01.31 Wednesday
- 00:30
人間には、絶対に譲れない一線というものがある。それは各自各様なものであるために客観性はなく、ゆえに法律で律することもできなければ、宗教で教えることもできない。一人一人が自分にとって良しとする生き方であって、万人共通の真理を探求する哲学ではない。ラテン語ならば「スティルス」 (stilus)だが、イタリア語の「スティーレ」であり、英語の「スタイル」である。他の人々から見れば重要ではなくても自分にとっては他の何よりも重要であるのは、それに手を染めようものなら自分ではなくなってしまうからであった。
もしかしたら人間のちがいは、資質よりもスタイル、つまり「姿勢」にあるのではないかとさえ思う。そして、そうであるがゆえに、「姿勢」こそがその人の魅力になるのか、と。